cheero Power Elite 20100mAh CHE-088

新しいモバイルバッテリーを買いました。
アルミ筐体380gで20100mAh、QuickCharge3.0対応のUSB Standard-Aポートと5V3AのType-Cポート(入力時5V2.5A)でいい感じです。PowerDelivery不要ならこれで十分でしょう。
Amazonで¥3,580でした。

まず、本体スイッチを押さなくても(A,Cに拘らず)ケーブルを接続すれば充電を開始してしまうのが説明と異なるところです。

充電用と付記された0.5mのAtoCケーブルが付属していますが、これはUSB2.0です。CCが56kΩでプルアップされているのを確認しました。

バッテリーへの充電は本体Type-Cポートを使います。別売CtoCケーブルを用いてType-C CurrentやPDの充電器でも充電できますし、付属or別売AtoCケーブルを用いてBC系またはQuickCharge系の充電器でも充電できます。一昔前のBC対応のみの充電器であれば1.5Aとなります。

IN/OUT兼用のこのType-CポートにPDやQuickChargeの記載はありません。また、cheeroの掲げるAUTO-ICがこのType-Cポートにも採用されているかは不明です。Type-C規格準拠の本来の振舞いであればAtoCケーブルで充電すればBCに限らず1.5Aまでになるはずですが…以下の様子と後述の計測結果より十中八九QuickCharge相当です。

まず、Type-C×QuickChargeという組み合わせはUSBの規格に非準拠です。そして、Type-C出力ポートを備えてQuickCharge対応!と堂々と打ち出された各社の充電器が(おそらく規格違反が取り沙汰されて)軒並み販売終了となっているのですが、本製品のAポートまわりの「こちらがQuickChargeです」的な誘導表記が少々強調し過ぎな気がする(完全に主観だしType-Cポートが本当にQuickCharge非対応の可能性もある)のと、QuickCharge3.0では5Vは3Aまでの対応でType-C Currentと同じ値であることからも可能性は高いです。つまり両者は5V下で同じ振る舞いをするためQuickChargeの表記をType-Cポートから消すだけで(実際にはQuickChargeなんだけどType-C準拠に見せかける事ができるので)事足りるということです。もちろんすべて憶測です。

所有しているANKER PowerPort5 40Wで付属AtoCケーブルを用いた充電を行ってみました。PowerIQ初代モデルで、1ポートあたり最大12W(5Vであれば2.4A)まで対応しています。
PowerIQは端末を識別して最適な電力を供給すると謳われているので、QuickCharge相当とされれば1.5Aを超えてくる可能性があります。
実際に計測したところ充電器側の定格最大の2.4Aを超え2.5A台まで流しています。一方で電圧は4.8V台まで下がっていました。
(関係があるかは分かりませんが、QuickChargeは電圧を下げる動作ケースもあるようです。こんな微々たる降圧もできるのでしょうか?)
PowerIQとどんなネゴシエーションがなされたか不明ですが、少なくともType-C規格に非準拠です。
QuickCharge非対応でType-C Current規格準拠であるNexus6Pを同じ環境で充電すると、規格通りに1.5Aまでしか出ませんし、5V台を保ちます。明らかにバッテリー側で何らかの工程が踏まれています。

ところで、公式サイトでは本製品の紹介に付随する形で、同社のQuickCharge充電器を推奨しています(執筆時点)。付属ケーブルがAtoCなので当然といえば当然ですが。
しかし、cheeroはType-C充電器(PD@Max18W)も出しています(もちろんこれも使えます)。それにもかかわらず、なぜType-C規格非準拠であるQuickCharge×AtoCのシナリオを選んだのでしょう。なぜ同梱する充電用ケーブルがCtoCではなかったのか。

Type-C充電器はQualcommが推し進めるQuickChargeブランドに比べれば、PDを除きその普及度はまだ(執筆時点では)発展途上です。非準拠な組み合わせとはいえ、Type-C端末自体の普及はQualcommの関与なしには語れず(AndroidスマホのSoCメーカー筆頭)、そのQualcommが急速充電としてType-CをQuickChargeに対応させている以上、煩わしいのは規格上だけの問題でありユーザーには利便性しかないのです。

Androidスマホ史で急速充電規格を牽引してきたのはQuickChargeであり、ver3.0になった今でも後方互換を保ち続けているため、QuickCharge充電器は普及しきった片側Standard-Aケーブルを流用できます。また、最新のType-Cスマホでも充電器が同梱される場合は多くの場合QuickCharge充電器×AtoCケーブルでしょう。つまり本製品と似た事情かもしれません。スマホはPCとのデータ通信(まだまだホスト側はStandard-A)にも利用されるケースがあったりコンプラ的にNGだったりする可能性もあるため異なるかもしれませんが。Qualcomm製SoCを積んでおきながらQuickChargeを切り捨てType-C系規格準拠に一本化したNexus/Pixelが実に異端な存在ということかもしれません。実はNexus5X/6P同梱充電器は正しく準拠できてないらしいけど。
おそらく、PD以外の目的でType-C充電器(つまりType-C Currentのみ)を使用している人はかなり少ないでしょう。そして新規格であるPD対応端末にはたいていPD充電器とCtoCケーブルが同梱されているはずです。Type-C Currentのみの場合でも同様です。

AtoCケーブルを同梱しておけば、充電面では購入者がたいてい持っているであろうBCまたはQuickCharge充電器をそのまま利用でき、端末への給電面では、本体QuickChargeポート×付属AtoCケーブルで1.5Aを超える急速充電ができた購入者はめでたしめでたし、
一方でそれでは急速充電できない「QuickCharge非対応でType-C系の急速充電を用いる端末」所持者は大抵CtoCケーブルを持っているため、持ち前のCtoCケーブルを本体Type-Cポートに使ってもらえばいいのです。
CtoCケーブルを同梱した場合は、Type-C系の充電器をわざわざ(失礼)モバイルバッテリーの為に購入する人が続出するわけです。

QuickChargeに同調する雰囲気になってしまいましたが、標準化団体の指針が主流になることを祈るばかりです。次期のQuickCharge4.0ではPDと部分的に仕様を共有するため、大電力給電の規格は多少整理されるでしょう。

ところで、今までは2013年に購入した「cheero Power Plus 10400mAh DANBOARD」を使用していました。ダンボーバッテリーの初代モデルで、非常に人気があり何度も再販となったものです。
出力が最大2.1Aと1Aの2ポート構成で制御機構も搭載していないため、Type-C端末に充電する場合は2.1Aポート側でAtoCケーブルを用いた5V1.5A給電を選ぶことになります。
このような前時代的な構成に加え、近頃はポートの調子自体も悪くなってきましたので、予備の「Goal Zero Sherpa 100 Recharger V2」を普段使いにしようとしたのですが…

これらの合体となりまして約1Kgになるわけです。容量に不安は無い(26,400mAh)ものの流石に重いというわけで、いよいよ世代交代と相成りました。

当時ダンボーを¥3,750で購入していることを考えるとバッテリー界隈はとても安くなっていますね。